スポーツメディアとジェンダー

スポーツに大きな大きな注目が集まる、東京オリンピック・パラリンピック開幕まであと3週間。

メディアという、スポーツにとってなくてはならない、ある意味、最重要の「パートナー」とスポーツ界が、同じ問題意識を持ちながら、どのようにジェンダー平等を推進していけるか。

第一部は、「メディアとスポーツの相互関係とジェンダー視点から見るメディアリテラシー」と題し、メディアの視点から、現代の状況がスポーツ界におけるジェンダー平等の推進に与える影響や、現場の状況について問題提起をしていただきました。

第二部は「アスリートの立場・経験から考えるこれからのメディアとの付き合い方」として、元アスリートから現役時代のご経験を共有していただき、ジェンダー平等を推進するために必要なスポーツメディアのあり方を、アスリートの視点から議論していただきました。

ウェビナーは、司会の生島淳さんの、こんな問題提起から始まりました。

「最近、大坂なおみ選手の全仏オープンの話題の中で、ちょっと注目が集まった記事があります。そこに「ケンブリッジ大学出版は2016年、メディアで男性と女性アスリートに対して使われている言葉を分析した結果を発表した。それによると、男性アスリートを表現する際に最も一般的な形容詞は「最速」「強い」「偉大」「卓越した」だった。他方、女性アスリートの場合は「独身」「既婚」「妊娠中」「年増」だった。 男性アスリートは、アスリートになれる。女性アスリートがなれるのは、怒りっぽい小生意気な女の子」と書かれていました」

これについて明治大学の高峰修教授は、データを用いて次のように解説。

  • 男性アスリートと女性アスリートと質問の種類の差(恋愛、結婚、パートナー、等)

  • 女性アスリートは3倍ニックネームなどで呼ばれる。〜娘、〜ちゃん、女三四郎(女性版)など。わかりやすさを強調するあまり、ジェンダーが反映

  • メディア露出の7割は男性スポーツ。オリパラになると平等になる

これについて、ジェンダーとメディアの専門家である治部れんげ氏は、スポーツ界に限らず、メディア全体の問題と指摘。メディア側も女性スタッフの数を増やしたり、内側から偏見をなくす努力が必要と訴えました。

テレビ朝日の古賀佐久子プロデューサーは、自身はスポーツ番組「Get Sports」のプロデューサーとして女性のアスリートも平等に扱おうと努力はするが、どうしても視聴率の追求から、女性スポーツの枠を確保するのが難しかったりする事実について言及し、また、テレビ報道の中でもスポーツの中継、スポーツ番組、ニュース、バラエティ・情報番組の中でジェンダーに対する意識の差があると指摘。社内でもジェンダーに対する意識改革や、テレビ業界が社会に与える影響について、しっかりと学んでいく必要があるとコメントしました。

また司会の井本から、東京2020組織委員会ジェンダー平等推進チームで和訳した、IOCの「スポーツ報道におけるジェンダー平等のためのガイドライン」の紹介があり、高峰教授も「このようなガイドラインがメディアの皆さんと共有され、それぞれの認識が向上することが望ましい」と述べました。

第二部では、元アスリートの経験から、率直な意見が出されました。

元競泳選手の岩崎恭子さんは14歳という若い時期に金メダリストとなり、注目を集め、性的画像撮影などの問題も経験。今のようにアスリートが多くテレビに出る時代とは異なったが、自分の意志に反して必要以上にメディアに取り上げられたことに対して大きな戸惑いがあり、「自分は有名になるために速くなったわけではない」と、加熱報道に対してアスリートの意思が尊重されるべきと訴えました。

元ビーチバレー日本代表の浦田聖子さんも、競技の見られ方に疑問を抱いた一人。当時海外遠征を経験していた浦田さんは、ビキニ姿にも抵抗がなかったが、今の高校生の中にはそれが嫌で競技を続けない子もいると指摘。競技の人気やスポンサー確保だけでなく、普及や社会への影響も考え、選手と連盟が話し合い、競技の広報戦略を一緒に作り上げる動きが必要と訴えました。

元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんは、ジェンダー平等についてラグビー界でもさまざまな努力がなされているが、まだ自分を含め、認識が足りないと自戒しつつ、間違ってもいいからしっかりと学んでいく姿勢が必要で、「少しのミスには寛容にお願いします」とコメントし、特に男性参加者の共感を集めていました。また、ラグビー界では廣瀬さん自身が中心となって現役時代に選手会を設立し、自分達を取り巻くさまざまな問題について議論してきたが、そういった選手たちが自主的に考える流れが必要であると述べました。

これらの議論から、メディア側、見る側、そしてアスリート・競技団体の三角形のバランスが、一緒に意識改革をしていかなければ、なかなかジェンダー平等は進んでいかないという指摘に、参加者の皆さんの多くが納得したようでした。

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