IOC新会長から、世界のアスリートからの書簡への返信

カースティ・コベントリー氏、IOC新会長に就任

2025年3月20日、ギリシャのコスタ・ナバリノで開催された第144回国際オリンピック委員会(IOC)総会において、カースティ・コベントリー氏(41)が第10代IOC会長に選出されました。

コベントリー氏はジンバブエ出身の元競泳選手であり、アフリカ出身者および女性として初めてのIOC会長となります。コベントリー氏は、スポーツと持続可能性の融合を推進する立場を取っており、IOCの持続可能性戦略の継続・強化が期待されています。

今回の会長選では、Athletes of the World が主導し、日本人25名を含む、450名のオリンピアンが気候変動対策の必要性を次期会長候補に訴えたことが注目されました。

会長選前に送られたこの書簡に対し、コベントリー氏は次のようにコメントを返してくださいました。

「私は、世界、そしてスポーツの未来を脅かす環境問題に対するあなたの懸念を深く尊重し、共有します。

気候変動はもはや遠い問題ではなく、アスリート、ファン、開催都市に等しく影響を与える現実です。オリンピックの未来と、オリンピックを経験する世代を守るために、私たちは断固たる行動を取らなければなりません。

私が選出されれば、会長職の早い段階であなたとお会いする機会を歓迎します。オリンピックは常に団結と進歩の道標であり、私たちの現在の課題は、それが次の世代にも続くようにすることです」

私たちの呼びかけに対し、署名をしてくださった方、オリンピアンやパラリンピアンに転送し署名を呼びかけてくださった方々に心よりお礼を申し上げます。

IOC次期会長候補がオリンピアンの気候変動対策要求に賛同

次期IOC会長候補に送られた書簡では、89カ国・50競技、450名のオリンピアンから、「地球の保護」を最優先課題とするよう次期IOC会長に強く求められました。オリンピックの象徴的価値を守るため、気候変動対策の必要性を訴えました。

オリンピアンの声

Elana Meyers Taylor(エレーナ・マイヤーズ・テイラー、ボブスレー・米国代表、五輪5回出場)「ゲームのためだけでなく、子供たちが生きる未来のために、真の解決策をリードする指導者が必要です」

Brooke Raboutou(ブルック・ラバトゥ、クライミングのパリ2024銀メダリスト・米国代表)「アスリートとして、環境がパフォーマンスや健康に与える影響を直接感じている。次期IOC会長は、未来の世代のために行動を起こすべきです」



他の会長候補者からも以下の返信がなされました。

  • Prince Feisal Al Hussein(フェイサル・アル・フセイン王子)候補:「世界中のオリンピアンの力強いメッセージを歓迎する」とコメントし、気候条件が厳しい国々の大会開催の可能性を広げる柔軟なスケジューリングを支持。

  • Sebastian Coe(セバスチャン・コー)候補:「もし選出されたら、気候変動対策は最優先事項」と述べ、オリンピアンとの意見交換の場を設ける意向を示しました。

  • Johan Eliasch(ヨハン・エリアシュ)候補:「オリンピアンの要求には、彼らが求める大胆さで応えなければならない」と強調。

一方で、サマランチJr.、渡辺守成、ラパルティアンの3名は公開書簡への直接的な回答を示しませんでしたが、持続可能性に関し、以下のマニフェスト(公約)をしていました。

  • David Lappartien(デビッド・ラパルティアン)候補:冬季大会の気候変動への適応策の必要性を指摘。

  • Juan Antonio Samaranch Jr(フアン・アントニオ・サマランチJr.)候補:オリンピックの開催時期を冬に移す可能性を示唆。

  • Morinari Watanabe(渡辺守成)候補:環境負荷軽減のため、オリンピックを複数の大陸で同時開催するモデルを提案。

 

新IOC会長への期待

IOCは2030年までに直接および間接的な温室効果ガス排出量を50%削減し、オリンピック・フォレスト・プロジェクトを通じて100%以上の残余排出量を補償することを公約しています。次期IOC会長は、ミラノ・コルティナ2026、ロサンゼルス2028、フランス・アルプス2030、ブリスベン2032など、環境面で重要な課題を抱える大会を統括することになります。

今後のオリンピックと、それを通じて世界中に影響を与えるアスリートたちの未来は、次期IOC会長のリーダーシップにかかっています。スポーツ界が持続可能な未来のためにどのような決断を下すのか、今後の動向が注目されます。

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