スポーツ界の脱プラって?
さて、「スポーツ界の脱プラ」って、実際、どんなことができるのでしょう?
―――という質問に真正面から答えてくれるのが、『Plastic Game Plan for Sport』(プラスチック作戦計画)というガイドです。
こちら、2020年に国際オリンピック委員会(IOC)が国連環境計画(UNEP)との共同で発表した公式ガイドで、かなり網羅的でわかりやすい内容です。
ざっと内容をご紹介しましょう。
★とても読みやすく実感のこもった内容
「国際オリンピック委員会の出した文書」なんていうと、とても堅苦しい内容をイメージしてしまいますが、このガイド、冒頭からとても読みやすく、実感のこもった内容となっています。
「プラスチック汚染は、私たちが大好きなスポーツにもダイレクトな影響を及ぼしかねない[…]。それなのに、スポーツイベントは膨大な量のプラスチックごみを生み出し、問題を作り出す側に立ってしまっている。でも、安心してほしい――状況は変えられるのだ。[…]このガイドでやり方を説明しよう。」
・・・といった感じ。
こうした前向きで明るいトーンは、すごくいいなと感じます。偏見かもしれませんが、日本でこういう文書が出ると、すごくしかつめらしい内容になりそうなので…。内容的にも、プラスチック汚染の現状にまっすぐ切り込み、日本ではまだそれほど議論されないプラスチックの「健康リスク」にも言及するなど、「進んでいるな…」と感じさせられます。
★求められる6つのアクション
1.リフューズ(Refuse)
「ストローやペットボトルやレジ袋などの使い捨てプラスチックアイテムを配らない」
2.リデュース(Reduce)
「必要なプラスチックは、使う量を減らす方法を見つける」
3.リユース(Reuse)
「使い捨てアイテムを何度も使いまわせるタイプに切り替える」
4.リプレース(Replace)
「プラスチック以外の素材に切り替える。または、しっかりリサイクルされるプラスチックや、簡単にリサイクルできるプラスチックを選ぶ」
5.リサイクル(Recycle)
「使われたプラスチックはすべて確実にリサイクルされるようにイベントを準備する」
6.リマインド(Remind)――気づきを与え、広める
「メッセージを広め、人々の行動を促す」
最後の「リマインド」は一般的な3Rや5Rにはないワードですが、すごくいいですね。みんなの憧れの存在であるアスリートたちが特に大きな役割を果たしうる領域です。
6つのアクションそれぞれについて、既に世界各地のスポーツイベントで取り組まれた成功例が紹介されています。コロナ禍を経て、これらから次にどんなうねりが生み出されるのか、とてもたのしみです。
★「カギを握る要素」
さらに、より踏み込んだ具体的な提案についても書かれています。
(※以下、長くなりすぎるので適宜割愛し、内容も意訳である点をご了承ください)
・ペットボトル
⇒給水ポイントを設置しよう
⇒会場でのペットボトルの販売を中止しよう
⇒マイボトルの携帯を呼びかけよう
⇒リユースカップの配布や販売をしよう(企業協賛のチャンス)
・フード
⇒プラスチックストローをやめよう(必要なら紙製や堆肥化可能なものを)
⇒ケチャップやソース類は個包装でなくディスペンサーを用意しよう
⇒リユース食器、または堆肥化可能な食器に切り替えよう
⇒どうしてもプラスチックを使うなら、確実にリサイクルされるよう、適切な場所に分別容器を設置しよう
⇒リユースの導入ができない場合は、紙製やバガス(サトウキビ繊維の環境配慮型素材)、竹製など堆肥化可能な素材を検討しよう
・バイオプラスチック(植物由来のプラスチック、生分解性プラスチック)は?
⇒「生分解」と謳われていても、専用の施設でないと生分解しなかったり、通常のプラスチックと混ぜてしまうと、プラスチックのリサイクルを阻害する要因になるため、注意しよう
⇒自然界に漏れ出てしまえば、通常のプラスチックと同じくマイクロプラスチック汚染を引き起こすので、使わないようにしよう(←という強い表現で書かれていて驚きました!)
・業者の梱包
⇒取り引き業者にあらかじめすべてのプラスチック梱包の「Reduce、Replace、Remove」を求めよう
・花火や装飾
⇒プラスチックを含むものが多いので、生分解性の素材に切り替えたり、いっそ盛り上げ方をまるごと再考しよう(花火はやめてライトショーにしてみては?)
⇒風船は空に放さないように!(天然ゴム製のものも海に落ちれば容易には分解しない)
・看板、チケットなど
⇒看板や標識には日付を入れないで、次回以降のイベントでも再利用できるようにしよう
・ごみの分別
⇒分別ステーションをふさわしい場所に設置し、とてもわかりやすい表示をつけよう
・・・割愛してもこれだけのアクションの可能性があります。できることは山ほどあることがわかります。
★すべてはこれから
ガイドにはさらにスポーツウエアのプラスチック問題や、「私はアスリート。何ができる?」「私はファン。何ができる?」といった項目も含まれています。
こと環境問題については対応が遅れがちな日本。
こういったガイドを生かし、いい流れが生まれることを願います。
文責:服部雄一郎