イベントレポート「なぜ、スポーツ界は気候アクションに取り組むのか?」

科学者、アスリート、クラブ経営者が語るスポーツの未来

「スポーツ×気候アクション基礎講座 Season 3」公開講座① 開催レポート

10月1日、一般社団法人SDGs in Sportsは、公開講座「なぜスポーツ界は気候アクションに取り組むのか?」を開催しました。

東京大学未来ビジョン研究センター教授の江守正多氏による基調講演に続き、ノルディック複合のオリンピックメダリスト・渡部暁斗氏、トヨタアルバルク東京代表取締役社長・林邦彦氏がパネルディスカッションに登壇。SDGs in Sportsの井本直歩子がモデレーターを務めました。

気候変動によってスポーツの環境が脅かされる一方、スポーツには社会を動かす力があります。科学者、アスリート、クラブ経営者、それぞれの視点からスポーツ界が果たすべき役割を考えました。

「我慢」ではなく、社会の仕組みを変える ― 江守正多氏

第一部では、江守氏が地球温暖化のメカニズムや今後の気候変動の影響について、シミュレーションや「2050年の天気予報」の映像を交えて解説しました。

猛暑によるスポーツ活動の制限、積雪量の減少、自然災害による大会の中止など、気候変動はすでにスポーツの未来を脅かしています。

江守氏が強調したのは、気候変動対策は個人の「我慢」だけでは実現できないということ。エネルギーや交通、建物など、社会を支える仕組みそのものを変える必要があります。

スポーツ界においても、個人の環境配慮にとどまらず、施設や大会運営、移動手段などを見直していくことが求められています。

雪の減少を目の当たりにして ― 渡部暁斗氏

長野県白馬村出身の渡部氏は、競技生活を通じて実感してきた雪の減少について語りました。

かつては一晩で車が埋まるほど雪が降った故郷でも、近年は積雪が減少。海外のトレーニング拠点では、氷河の後退や雪不足によるコースの短縮、大会の中止などを経験してきました。

こうした危機感から、2022年に「エコパートナープロジェクト」を開始。ヘルメットのスポンサー広告枠を活用し、競技活動を含む家族の年間CO2排出量をカーボンオフセットする取り組みを行いました。

今年6月の引退セレモニー「Akito Watabe's Last Jump」では、子どもたちが体を動かして発電し、リフトを動かす電力を生み出す企画も実施。

スポーツの楽しさを通じて環境問題への関心を育む、アスリートならではの実践を紹介しました。

スポーツビジネスから社会を変える ― 林邦彦氏

トヨタアルバルク東京の林社長は、クラブ経営とサステナビリティを結びつける取り組みを紹介しました。

クラブでは、施設のエネルギー使用や観客の移動などを含む年間CO2排出量を算定し、約2,270トンの排出を把握。新たなホームアリーナ「TOYOTA ARENA TOKYO」でも、再生可能エネルギーの活用や緑地化、資源循環などに取り組んでいます。

林氏は、スポーツには企業やファン、地域社会をつなぐ力があると指摘。実際に、ファンが自主的にアリーナ周辺の清掃活動を行うなど、活動の輪が広がっています。

また、組織内で取り組みを浸透させるには、まず行動し、小さな成功体験を積み重ねることが重要だと語りました。

スポーツの力で、社会の変化を後押しする

ディスカッションの最後に、江守氏はアスリートが持つ発信力や人々を巻き込む力への期待を語りました。フェアプレーやチームワーク、困難に挑む姿勢は、気候変動という大きな課題に向き合う上でも重要な力になります。

スポーツを守るために、スポーツ自身が変わる。そして、スポーツの力で社会を変えていく。

今回の公開講座は、そんなスポーツの可能性を改めて感じる機会となりました。講座終了後のネットワーキングでも、参加者同士の活発な交流が続きました。

SDGs in Sportsでは、今回の学びを具体的な行動につなげる「スポーツ×気候アクション基礎講座 Season 3」を開催しています。国内外の先進事例や実践的なノウハウを学ぶ講座に、ぜひご参加ください。

[スポーツ×気候アクション基礎講座 Season 3 詳細・お申し込み]

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